刹那い心-1
わかっていても、止まらない……
午後の昼下がり、伝票整理と称して地下の資料倉庫にいた私。
しかし実際には誰も来ないこの部屋で、一人ですることがあった。
「あふぅ……あぁぁ……」
棚に寄りかかるようにして、吐息を洩らす。
その手は制服のシャツのボタンをはずし、ブラの隙間から手を差し入れ胸を弄ぶ。
「あぁ…幸也ぁ……」
もう、1か月も会っていない、愛しい相手の名前が口について出る。彼のに愛撫をされているように手が動き、いつしか手はスカートの中に差し入れる。ショーツは、すでに蜜で湿り気を帯び、軽く押しただけでもクチュと音を立てるほどだった。
“やらしいなぁ、由布”
どこからそんな声が聞こえてきそうで、私はさらに体を熱くしてしまう。
指はショーツを避けて蜜の溢れる蜜壺の中に飲み込まれていく。ゆっくり早く動かしながら、もう片方に持っていたものを目の前に持ってくる。
それは黒く太い、男性器を模した大人の玩具。何度も舌で舐めずり、まるで本物を口に含むように十分に湿らすと、待ちきれないようにうごめく蜜壺の中に埋めていく。
「あぁ…あぁぁぁぁぁ…・・・・・・・」
作りものなのだから、本物と同じとはいかないが、それでも欲しい刺激を与えてくれる。
スイッチを弱めに入れて声を上げる。昨日も同じようにここで自らを慰めたというのに、満たされることはない。それでも今はこれだけが自分を満たしてくれるものなのだ。
“逝くのかい? 由布”
「あぁ……逝く、逝くわ、幸也……逝っちゃうぅぅ………」
腰を揺らし、彼に突き上げられるかのようにバイブを動かす。外に響いてもおかしくないくらいに喘いで、呆気なく逝ってしまった。
「はぁ、はぁ……はぁ……はぁ・・・・・・・・」
ずるずると床に座り込んだ私はしばらく動けず、しばらく息を整えるように何度も深呼吸を繰り返す。バイブは中の収縮で外に押し出され、ゴトリと音を立て床に落ちた。
地下にあるから明かりは蛍光灯だけ。時計もないから、今がどのくらい経っているのか分からない。
(そろそろ戻らなきゃ……)
一応理由をつけて離席してきているとはいえ、あまり長い時間では同僚も不審に思うだろう。
身なりを整えて戻らなくては……そう思って立ち上がろうとした、その時だった。
「こんなところで何をやってるんだい? 沢野さん」
突然上から下りてきた声に、私は見上げて目を丸くした。
「ぶ、部長……」
いつの間に入って来たのだろう……そこに立っていたのは、今はいるはずのない人だった。
「仕事もしないでこんな所で……ずいぶん楽しんでるじゃないか?」
ずっと逢いたいと願ってやまなかった人物……しかし、その顔は何か企んでいるかのような表情をしていた。