刹那い心-3
「お願いぃ許してぇぇぇ……逝くっ……逝っちゃうぅぅぅぅぅ」
「おもちゃで行くのかい? 由布。逝ってごらん。僕にいやらしい顔をさらして逝くんだ!」
私は許しを請うように声をあげ、彼にしがみつくような形でまた絶頂を迎えた。
その様を彼は嬉しそうに見つめて笑った。
絶頂に達し、すべての力が抜けてしまった私は、腕も足も床にだらりと落としうつろに見上げた。
不意に体を起こされ、柔らかく抱きしめられた。うっすらと浮かんだ涙でぼやけた視界の向こうには、間違いなく梶田の姿があった。
「由布、またいやらしくなったんじゃないか? 僕に会えなくてそんなに寂しかったのかい?」
「幸也ぁ……」
さっきの意地悪な表情とは違ういつものやさしい顔に、私は漸く安心した。
社長の代理とはいえ海外出張で1か月も顔を見なかったのだ。毎日職場で会い、週末ごとに濃厚な時間を過ごしてきた身にとって、1か月も放置されるのは何にも耐えがたいつらさだった。
「悪かったな、連絡もできなくて」
そう言って抱きしめてくれる。それだけで自分が“愛されている”と実感できた。
たとえ許されない関係だとしても、心が満たされる。
「いいんです……こうして顔が見られればそれで」
「……じゃあ、埋め合わせをしなくちゃいけないね」
今夜、残業できる?
それが何を意味するか、すぐに察した私は無言で頷く。
身体の奥から熱い何かが湧き上がるのを、感じていた。