夏の始まり、夏の終わり(中編)-2
男には事前に東京へ来る旨を伝えてあった。
仕事を早めに切り上げて、夜に時間を作ってくれるとこのことだった。
少しでも男と早く会いたかった私は、男の勤める会社の傍で待つことにした。
正直、どう時間を潰せばいいのか分からなかった。
東京にいたころは、こういった土地には足を踏み入れたことがなかった。
大きな建物が並ぶのは同じだが…
そこに存在している人々は、私が関わってきた人間とは全く違う生き物に見えた。
電車なら、30分ほどしか変わらないのに…
私がかつて生きていた東京と、男が働く東京は…
生み出す空気が、あまりにも違いすぎた。
店に入り、コーヒーを飲みながら…
私は、ただぼんやりと外の景色を眺めている。
この東京で生きている人々からは、今の私は何者に映るのだろうか。
夜になり、私の携帯が着信を知らせる。
男からだった。
私は、近くにいる旨を伝え、身支度を整え店を出た。
男は、私が田舎町で会う時と同じく働く男の身なりだった。