アイスクリームと蕎麦-3
「ねぇ、誰かいるの?蕎麦3つあるけど」
まさかナオが2つ食べるんじゃ、と思ったが、尋ねてみると、彼は気まずそうな顔をした。
「あー、まぁ、いるにはいるんだけどな…」
ピンときた。
「もしや彼女?」
「アホか」
違ったか。
「じゃあ、誰?」
「あー、それは、だな」
ナオは苦笑いをするだけで答えてはくれない。
すると、
ブー、ブー、
「ちょっと待ってろ」
ナオはズボンのポケットから携帯を出した。
「もしもし?何だよ。…コンビニなら着いたわ。…あぁ?うっせぇなあ。うちわでも扇いでろ。…えっ?」
そう言うとナオは私の方をチラリと見て、また携帯に戻った。
「いや、あいつだって忙しいだろうし、…分かったよ、連れてくればいいんだろ。ハイハイ」
そう言ってナオは乱暴に携帯を切り、私を見た。
「お前、ヒマ?」
「まぁ、ヒマだといえばヒマだけど」
「…今から俺んち来ない?」
「…行く」
面白そうだし、ね。
「じゃあ行くか」
ナオは蕎麦が入ったカゴを持って冷凍庫に戻り、適当にアイスを2つ取り出す。
「サチはどれにする?」
「えっ」
私は冷凍庫の中を覗く。
そして、先程拒まれてしまった世界に再び手を伸ばして、住民の1人を掴んだ。
「…じゃあ、これ」
そう言ってカゴの中にそれを落とすと、ナオはにっと笑って私の頭を撫でた。
会計を済ましてコンビニから出ると、熱風が体を包んだ。