陽だまりの詩 16-9
奏は既に、二十分ほどその紙を眺めている。
その間、お互い無言で時間を過ごしていたために、俺は段々とやきもきしてきた。
「…奏?」
俺は声をかけてしまう。
もうこの美沙の書いたメッセージだけが頼りなんだ。
悔しいが、俺だけの力では奏にわかってもらえることができなかった。
美沙…頼む。
「……」
…だめなのか?
そう思った瞬間だった。
「…美沙…ちゃん…」
「…奏」
「死んじゃったの?」
そう言って俺を見た奏の目からは、涙が溢れていた。
その目は、とても愛らしい奏の目だった。
「奏っ!」
俺はとっさに奏を抱きしめた。
「春陽さ…」
「そうだ…!美沙は…死んだんだよ…」
「痛い…です…うっ…」
「美沙…美沙は…俺達の幸せを願ってくれてるんだよ…」
「春陽さん…私の手を…ずっとずっと引いてください…」
「ああ…ああ…絶対に…」
それからしばらく、二人で泣き明かした。
このときの俺は、久しぶりの奏の温もりを感じることさえも忘れていた。
俺は、もう泣かない。