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『LIFE LINE』
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『LIFE LINE』前編-4

―――ガララッ

ドアの開く音がした。今日、何度目かの偶然が僕らを引き合わせた。

「あら?」

棗先生は見覚えのある僕の顔を見ると、微かに目を見開いてこちらに近づいてきた。

「成瀬くん?何してるの」

初めて名前を呼ばれたが、不思議と違和感はなかった。それよりか、僕の名前を覚えてくれていたほうが驚きだったけど。

「見て分かりませんか、復習してるんです」

「居残り?熱心ね。そんなに勉強好きなの?」

先生は不思議そうに机を眺めるとそう呟いた。

「そんな訳ないじゃないですか。仕方なくやってるだけですよ」

皮肉のつもりで答えたが、彼女の表情に変わりはなかった。
手に取った僕のノートをパラパラと興味もなさそうにめくっている。

「じゃあ、君。何の為に勉強してるわけ?」

「なんでって・・・大学に行くためですよ。
僕、受験生ですから」

「そのわりには苦労してるみたいね」

先生は僕にノートを返しながら勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「この問題、全部間違ってるわよ」



夜、鍵を開けて家に入るとほのかに甘い匂いが鼻をついた。
ドアを抜けてリビングに顔を出すとすでに夕食の準備が整っていた。

「あっ、お帰りなさい。今日は遅かったね」

妹の明菜だ。僕の帰りを待っていたのか、机のうえの料理はラップをかけられたまま手を付けられていなかった。

「・・・母さんは?」

「仕事で帰れないみたいだから先に食べてていいって」

僕にお茶を出しながら明菜はなんでもないように言った。
母さんの仕事が忙しいのはいつものことだ。僕も明菜もそんなに気にするほどでもなかった。

「ねえ、お兄ちゃん。
お父さんから手紙、きたんだって?」

椅子を引きながら明菜が身を乗り出すようにして聞いてきた。

「ああ、そうだけど。」

「ホントに?なんて書いてあったの」

期待を寄せる目つきでこちらを見る。
僕は書かれていた内容をそのまま伝えた。

「じゃあ、久しぶりにお父さんに会えるんだ」

「どうせ帰ってきたって、またすぐに高飛びするんだ。同じじゃないか」

僕がにべもなく毒を吐くと、明菜はそれをとがめるような顔をして言った。


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