夏の始まり、夏の終わり(前編)-1
私はこの田舎町に舞い戻ってきた。
そして、私は貴方に出会って恋をした。
こんな私でも、また…恋をした。
神様は、私が恋をすることを再び許してくれたのかもしれない。
だから私は、生きていきたいと思った。
たとえ、貴方の足元にも及ばない…つまらぬ一生だとしても。
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若かった私は、東京の大学に憧れ…親の反対を押し切り上京した。
よくある話だが、都会の黒い手たちに溺れ…
自分を見失い、高い志を持っていたはずの勉学を忘れ…
気付くと、20歳の私は男に逃げていた。
親に言わぬまま、勝手に男と籍を入れた私は、大学を中退し…
男が何をして稼いだかも分からぬ金で生きていた。
あの頃のことは、正直よく覚えていない。
人間は、都合のいいことだけを記憶に留める生き物らしい。
それは本当のことなのだろうか。
私は、数年すると…カゴの中の生活が耐えられず…自分より若い男に走った。
結婚していた男は、そんな私を黙って放った。
それが優しさだったのかプライドだったのか…それとも
私というペットに飽きたからなのかは今でも正直分からない。
男と交わり、汚らしい「愛」という言葉を使う以外に私は何も出来なかった。
それだけが、毎日を生きる私の原動力だった。