夏の始まり、夏の終わり(前編)-12
こんなことをしても…男は私を嫌いになるだけだ。
そう分かっていても…やめられなかった。
どうせ自分の物になるわけもない大切な物だから
刹那でもいい…
一瞬でも自分のものにしたい…
敢えて言うなら、私はそんな気持ちだったのだろう。
酒の勢いもあるのかもしれない…
男に感じ取る…東京という空気のせいで
私の心の中は、過去と今の全ての黒いもので満たされてしまっていた。
どうしてあの時、あの子を裏切ったのだろう…
どうして私は、あの子を裏切れたのだろう…
何故、真実を見つめることが出来なかったのだろう…
私は…逃げ続けているのか?
東京から逃げれば済んだのか?
私が望んだ未来はなんだったのだろう
私は、この男に嫌われても仕方ないのだ…
私はそもそも、愛されるわけなどない…
確かに愛していてくれていた、あの子ですら裏切った私を
誰が愛してくれるというのだろう?
私は裸のまま、男のものを口に含み…
しばらく遊戯を続けた後、男の上に跨った。
しかし男の顔からは、疲労と嫌悪しか感じ取れなかった。