夏の始まり、夏の終わり(前編)-11
「あの」
私は、勇気を振り絞って声をかけた。
「ここに…泊まって下さい」
「え?」
男は、どう反応したらいいのか分からないようだった。
「私なら大丈夫ですから」
「しかし、ここは貴方一人だけなのでしょう?」
「ええ…まあ」
「なら、そんなこと…」
「大丈夫ですから、私は」
男は、本当に遠慮したそうな顔だったが…
ますます激しく降り積もる雪を見ると、諦めたように
「ではお言葉に甘えて…申し訳ありません」
と了承した。
体の芯まで冷えてしまった男は、ストーブに当たっても震えが止まりそうになかった。
そこで私は風呂を沸かし、男に入浴するよう勧めた。
男は、全てにおいて遠慮気味だった。
男が入浴している間、私は緊張のあまり酒を飲んだ。
酒が入らなければ、とてもではないが…
男と顔を見合わせて喋れないと思ったからだ。
その夜、私は男を誘った。
仕事で疲れていたせいなのか、男は少し怪訝そうに私を見た。
それでも私は、何故か男を誘い続けた。