FULL MOON act4-1
彼女は隣で寝息を静かにたてている。白いキャミソールとスパッツで寝ていて、とても涼しげだ。ゆるくパーマのかかったセミロングの茶色の髪がくるりと顔を縁取っていて、セクシーな彼女にほんのり甘さを付け加えている。
「ううん…」
暑くなったのか不明瞭な言葉を呟き、眉をしかめながら布団をけった。そんな姿を微笑みながら見る。そして布団をかけてあげる。
外ではカーテンの隙間から光がもれる。鳥が鳴く。1日が始まろうとしている。
「…ん」
また彼女は長い手足を布団からだす。足の爪の先には青がのっている。白い肌と青はとてもあう。
俺は体を起こし、白い足をなでる。指を手でこねる。爪をよく見ると少しはみ出して肌に青がのっている。肌に悪いのでないのか。指でこするがとれる気配がない。更に力をいれれば彼女は起きてしまう。
俺は手を離した。次は俺がぬろう。
「高坂さん?」
それから一時間後、すっかり目がさめてしまったので少し手の込んだ朝食をつくりはじめた。味噌汁をつくり、鮭を炙り、卵とハムを一緒に焼いた。ご飯もたく。あとは待つだけ、と思った頃彼女は目をさました。
「…おはよう。」
寝ぼけ眼で声をだす。いつもはキレイにセットしてある髪の毛もあちこちにはねている。眠そうに目をこすり、ひくひくと鼻を動かす。小動物みたいだ。その愛くるしい行動はわざとか?
「ご飯?」
「そうだよ。」
「…いい匂い。おいしそう」
伸びをし、起きあがり洗面所に向かう。排泄をし、顔を洗うのだろう。
彼女はいつも俺のことを早起きだ、という。私もご飯をつくってあげたいのに…と頬をふくらます。彼女の手料理は食べてみたいけれど、しばらくはこれでいい。これから嫌というほどつくるはめになると思うし。
「…おいしー」
器用に箸を動かし、少しずつ口に運ぶ彼女。一口一口笑顔で頬張る。
食べる姿も、かわいい。
「いってらっしゃーい」
最近、暇があれば彼女の家にあがっているから、よくない傾向だと思う。彼女はどんなに早くても俺より早く家を出ることはないから、見送ってもらうことが当たり前になっているのだ。新婚みたいな気分になる。それだけならいいが、彼女は別れ際寂しがって俺にキスを欲しがる。これじゃ結婚したらどうなるの?と苦笑いしながらも内心喜ぶ。そして優しくキスを落としてしまうのだ。
……重傷だ。
職場に男が少なくて本当に良かった。ジェラシーとは人を醜くするものだ。
こんなに誰かを愛おしく思ったのは初めてじゃないか?と思った。…付き合った人数は、たぶん普通より多い。
けれど、世界が変わった。
そんなことを考えながら歩いていると、職場につく。