FULL MOON act4-9
「飲むの初めて?」
「…はい。高坂さんの、びくびくしてました…」
その言葉に今度は俺が恥ずかしくなり、何も言えなくなった。ふらふらの彼女を立たせ、服を直す。けれど、まだ歩けそうにないので抱き上げてソファーまで移動させる。
ティッシュで顔についた俺のものを拭く。目がとろんとしていて、とても愛くるしい。
そこで再度キスをする。
彼女は、「この間みたい…」と呟いた。確かに、この間バイト先でシタっけ。
…彼女の初めてを知るほどうれしくなる。そんな子供じみた気持ち、情けなくなるくらい嫌だ。しかし、離したくない、と思っているのも本当だ。
「いつも強引で、ごめんね。」
まだ余韻に浸っている彼女に言う。
そんな俺に彼女は…優しく微笑む。
「高坂さんの強引さは、愛が伝わってきますよ…。」
再度俺は顔を赤らめた。
…まぁ、伝わってるならヨシとするか。
その後、並んで料理を作った。麻婆豆腐と、茄子の味噌汁。その他つまみ系。今日は中華を食べたい気分、と彼女が言ったからだ。
この部屋で二人分料理を並べるのは初めてだ。俺は部屋に人は呼ばない。
缶ビールを二本取り出し、蓋をあけ、彼女に渡す。こうして二人で酒を飲むのも初めてだ。
「新婚さんみたいですね。」
「じゃ今度エプロン着てよ。」
「…イヤです。」
「えー見たいのに。」
「だって高坂さん、…襲いそう。」
彼女曰く、バイト先のエプロンをしてた時にもしたから、何となくエプロン姿の時は警戒しているらしい。
…何気ない会話で笑い合う。
それこそ本当に新婚みたいだ。
「高坂さんの家1LDK?ここ何畳ですか?」
「8畳だよ。」
「一人は広くないですか?」
「広いよ。…住みたい?」
「えっ…。」
彼女は恥ずかしそうに目の前の豆腐を刻む。そんなにしたら小さくなって食べにくいだろ。イエスともノーともとれる反応だよな。ま、それはそのうち。それよりも。