FULL MOON act4-3
雨の日傘をささない彼女を知り、なんとなくまねしてみたり。(案外気持ちよかった)
何故か知らないが彼女の言葉や行動は心の奥に届く。
……理屈じゃないって?
…そういえば、あの日。
いつもの自分なら考えられないことをした日。
らしくなく、飲みすぎた様子の彼女を流れで送ることになった。
歩くたびに腕にもたれかかる彼女に、胸が高鳴った。
(酔った女に手を出すな)
自分に言い聞かせる。
がくん。
彼女は崩れるようにもたれかかってくる。…意識を完全に飛ばしてしまったようだ。なにか呟く。
「…むにゃ」
(…むにゃって。子供か。)
近くのベンチに座らせ、目覚まし用のコーヒーを買う。
「安西さん。起きて。」
「…ん…?」
「…めぐ。」
思わず、呼んでしまう。小さな優越感の後、彼女から思わぬ反応が返ってくる。
「…ケータ?」
「…え?」
腕を掴んでくる。心なしか指は震えてる気がして…。
「ケータぁ…やだやだ、別れなくないよ…ずっと一緒にいたいよ…」
「…安西さん…ちが…」
「…だって、こんなに好きなのに。ずっと一緒だって…いったのに…ケータ……」
彼女が他の男と間違えているのは明白だった。彼女の彼氏がケータ、というのは知っていた。何回か話を聞いたのだ…のろけ話を…。
(…ふられたのか…)
だから、こんなに飲んだのか…別れたからいつもははかない短いスカートをはいたりしたのかな…
俺は、ギュっと彼女を抱きしめた。
彼女は黙る。
…安心したようだ。
「…別れないよね?」
逡巡のあと、いう。
「別れないよ。」
一時的にも安心させたい…。そしてそのままキスを落とした。それだけならまだしも、俺はもうとまらなかった。
少し酒が入って、酔っていたんだと思いたい。