還らざる日々V-14
隅に一生のバイクが停まっている。
尚美はアパートの方に顔を向けた。一生が2階の通路を歩いているのが見える。
こみあげる怒りを抑えて様子をうかがう。
奥から2番目のドアの前で立ち止まる。どうやらチャイムを鳴らしているようだ。
すると、ドアが開かれ一生の肩越しに、自分と変わらない位の女性の顔が見えた。
(…あれが一生の彼女…)
美人とは言えないが、人好きしそうなタイプ。自分とは異質だと思えた。
一生の横顔がチラッと見える。今まで見た事も無いような柔和な笑顔だ。
やがて、一生はドアーの奥へと消えた。
尚美は、言いようのない憤りが湧き上がるのを覚えた。