還らざる日々U-7
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仕事を終え、尚美は久しぶりに会社の仲間達と飲んでいた。
食事をしながら、お喋りをしながら1杯のつもりだった。
しかし、いつの間にか3杯目のグラスを傾けていた。
「都田。彼氏出来たんだって?」
となりの席から尚美に声が掛った。同期の澪子だ。
その途端に同年代の仲間が次々と話に加わってくる。
「前にコンパやった時のコでしょ?途中で出て行った」
尚美はそれには答えずグラスを飲み干した。
「今日なんて土曜日なのに、こんな所に来てて良いの?」
虚ろな目で本音を漏らす尚美。
「私よりも仕事が大事だってさ…」
バックからタバコを取り出し、1本くわえるとライターで火を着けた。
ゆっくりと煙を吐きだす。周りの仲間は困惑していた。
「私の事より仕事だって…」
そんなやりとりに、そばにいた先輩がチャチャを入れてきた。
「案外、他の女と遊んでるんじゃないの!二股かけられてたりして」
下品な笑い声が店内に響く。仲間達はシラケてしまった。
彼女は、同じ販売員仲間から疎ましく思われる存在だったからだ。
普段なら知らん顔が出来る。だが、今は違った。
フラストレーションが溜まりに溜っている上、彼女は酔っていた。
尚美は先輩に視線を移した。
「先輩には分からしまへんやろな。何年も男のいてへん方には」
「なんですって!都田!どういう意味よ!」
先輩のヒステリックな声が響く。
「ホンマの事ですやろ。仲間でコンパやるちゅうたら、呼びもせんのにノコノコ付いて来て。
相手にモーションかけても、みーんなから嫌がられて。かっわいそうに…」
「いい加減にしなさいよ!」
図星を突かれた先輩は、尚美の顔をひっぱたいた。
ゆっくりと頬を撫でながら、虚ろな目が獰猛に変わった。