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過ぎ去りし日々
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還らざる日々U-3

「クソ!帰ったらヤカマシ…アカン。またこの前みたいにケンカになるわ…」

 尚美は立ち上がると、セーターの袖を捲った。

「しゃーないわ。今日は溜った洗濯モンでも片づけて、買い出しでもしよ!」

 そう言うと脱衣所に置いた汚れた服を、洗濯機に放り込む。

 朝の冷気はかなり緩み、暖かささえ感じさせる。
 脱衣所の開けた窓からは風がそよぎ、尚美の身体をすり抜ける。

 風からは芽吹いた草や木の匂いがする。春のはもう間近だ。

〈ゴウンゴウン〉と音を立てて洗濯機が回るとなりで、彼女はタバコを取り出した。
 尚美は最近、またタバコを吸うようになった。

 16の時、好奇心から覚えたが、就職と同時に辞めてしまった。
 だが、一生との関係を持ってからはフラストレーションが溜るようになり、また吸うようになってしまった。

 彼女の愛情表現なのだが、好きな男の事を全てを把握したいと思う反面、その男にも同じ事を要求しようとする。

 高校生の頃から数人の男と付き合ってきたが、それがネックとなって長続きした例がなかった。

 自分でもそれは解っていて何度も変えようとしたのだが、今度は思った事を抑えるためにイライラが募るようになった。

 窓にヒジを掛け、頬杖をついて流れる青い煙を眺めながら、尚美はふと、唇を歪めた。




───


「じゃ、オレ帰る。ところでバイトはいつまで続けるんだ?」

 朝食を終え、玄関口で靴を履きながら、一生は見送る聡美に尋ねる。

「まだ言ってないけど、今月の20日までにしようかなと思ってる。
 27日にはココも引き払って実家に帰るから」

「出発は?」

「来月3日かな。4日に病院が用意してくれる寮に入って6日からスタートだから」

「また来週来ても良いか?」

 聡美はにこやかに頷く。

「うん。20日以降なら毎日でも…」

 一生は聡美を引き寄せると、両手を頬に添え唇を重ねた。聡美も彼の背中に腕をまわした。
 頬に添えた手は、背中、腰へとまわり、聡美も引き寄せる。彼女の指先にも力が入る。

 互いに愛しさから激しく抱擁を交わし、唇を求め合う。その姿は、全身で欲しているかのようだ。

 どれくらいの時間が経ったろうか。ようやく重なり合った2人の身体が離れた時、聡美は力が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。

 一生は、そんな聡美を慈愛の表情で見つめる。


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