還らざる日々U-13
「じゃあ、またな…」
一生は玄関口でブーツのヒモを絞める。聡美は黙って彼の後ろ姿を見つめていた。
彼は立ち上がると振り向いた。聡美はやや寂し気な顔をしながら一生を見る。
2人の間にしばし沈黙が流れた。
一生が口を開いた。
「来週も土曜日いいか?」
聡美が頷く。
「いつでも来て…」
「分かった。来週も来るけど、さ来週の金曜日は豪勢にお祝いしよう」
一生はドアーを開けて聡美の部屋から出ていった。
いつもなら、下まで見送りに行く彼女だが、今日はその場から動かない。
下からはバイクのエンジン音が響いていたが、やがて小さくなり聴こえなくなった。