還らざる日々U-12
「…おはよ……」
昨夜の出来事を思い出し、はにかみながら聡美が挨拶をする。
「おうっ!ちょっと待ってな。あと、ベーコンエッグ作ったら出来上がりだから」
一生はフライパンを火にかける。
聡美はしばらく一生の調理姿を後ろから見ていた。
その時、何か抑え切れない気持ちが働いたのだろう。彼の真後ろに近づくと、シャツの裾を軽く引っ張った。
一生はチラリと後を見る。
だが、すぐにフライパンを扱いながら、空いた片手で聡美の手をポンポンと叩いた。
「どうした…?」
「何だか…嬉しくて…」
「オレもさ…」
聡美が彼の背中にすがりついた。一生は動きを一瞬止めたが、何も言わずに出来上がったベーコンエッグを皿に盛りつける。
「さあ!飯にしよう」
彼は陽気な表情を聡美に向けた。
───
昼前に2度目の目覚めを迎えた尚美は、熱いシャワーを浴びた。
二日酔いの身体を起こすには、最良の方法だ。
下着姿で部屋に戻ると、再び部屋着を着てキッチンのレンジにヤカンを掛けた。
お湯が沸くまでの間、彼女は手早く化粧水を顔に塗っていく。
しばらくすると、お湯が沸く合図が上がる。彼女は用意したカップ麺にお湯を注ぎ、部屋のテーブルに運んだ。
冷蔵庫に入れてある、飲みかけのポ〇リもテーブルに置いた。
3分間待った尚美はカップ麺のフタを開け、朝食代わりに麺をすするのだった。
「うわぁ!朝からごちそうね」
ベーコンエッグ、焼海苔、玉ねぎと大根の味噌汁。そして炊きたてのゴハン。
一生がゴハンと味噌汁を注いで遅い朝食が始まった。
互いがテーブルに向かい合う。一生は彼女の顔を時折見つめている。
聡美は、嬉しそうに〈美味しい〉と言う言葉を繰り返し、朝食を食べていた。