アイドルヲタですけど何か?-1
私には、秘密がある。
「優里聞いて!来週『ツンない』のノベライズ本が出るんだって!!」
それは、今目の前にいる親友にも言えない。
「ふーん。凄いじゃん」
「うん!あっ、買ったら優里にも貸すね」
「いいって。私なんかよりも剛太に貸してあげな」
「うん…。じゃあさ、一緒に買いに行こうよ!!本が出るの日曜日だし」
私の秘密、それは、
「ゴメン、来週の日曜日は家の用事があるんだ」
「えーっ、…まぁ、仕方ないか。最近、剛太とばっか遊ぶから優里とゆっくりしたかったけど」
「ホントにゴメン。その代わり、今週の日曜日にでも遊び行かない?新しい服欲しいし」
「行くー!!」
来週の日曜日にある──。
───私の住む所から少し離れた街にあるライブハウス。そこには大勢の人─ほとんどが女性である─が群がっている。
彼女たちは皆自身を着飾っていて、ソワソワしながらそこに立っていた。
周囲の人からすれば、彼女らを奇妙だと思うかもしれない。
それもそのはず。今は午後6時14分。この集団がここに群がり始めたのは朝の8時頃からなのだ。
何かがあるのは分かる。だが、そんな朝早くからここで待つ必要があるのか。
きっと彼らはそう思っているに違いない。
しかし、私はそうは思わない。
なぜなら、私もその『朝から何かを待っている』1人なのだから。