アイドルヲタですけど何か?-5
「─コンニチワ」
長嶋の姿を探すと、1番奥の席に座っていた。私はわざとらしい挨拶をして隣に座る。
こうして近くで改めて見ると、意外にも体つきはよく、容姿も悪くない。むしろ、寡黙な性格を直せばもてるんじゃないかと思う。
「あぁ、…で、何だったっけ」
長嶋は私に気がつくと、そんなことを言ってきた。
とぼけやがって。
「朝のこと、呼び出したのは長嶋君でしょう?」
すると彼は「あぁ」なんて今思い出したかのように言う。
「そうだったね、『ユリア』さん。まずは何から聞きたい?」
「何でその名前を知ってるのよ?あんた何者?」
勿論、会話は全て小声だ。誰かに聞かれたらマズい。
「知りたい?」
「当たり前」
すると、長嶋は少し考えた後、とんでもない言葉を口にした。
「『チサ』って知ってる?君の友達だよね?貴重なオタ仲間の」
「あんた…」
思わず声が震える。
さらに彼は自分の携帯を操作して、こちらに画面を見せてきた。
「これは誰でしょう?」
そこにいるのは私とチサさん。
ライブの日に2人で撮った、初めての写真。
「…外出よう」
私はそう切り出して席を立つ。
「いいよ、確か近くに教材室があるからそこででも」
長嶋は不気味な笑みを浮かべて私の後をついてきた。
「で、何であんたがそれを持っているのよ」
誰もいない社会科教材室の戸を閉めた後、彼を睨みつけて言う。でも長嶋は落ち着いたままだ。
「『チサ』の本名知ってる?」
「知らない」
知る必要はない。
私達はCREATORのオタクであり、彼らを愛している。私達の間にはこの気持ちだけで十分なのだ。