投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

過ぎ去りし日々
【その他 恋愛小説】

過ぎ去りし日々の最初へ 過ぎ去りし日々 35 過ぎ去りし日々 37 過ぎ去りし日々の最後へ

還らざる日々T-6

「背中流したるわ」

「お、オマエ何や。アッチに行っとれや」

「今日、色々連れてってくれたお礼や。そのままジッとしとき」

 しばしの沈黙の後、一生はため息を吐いた。

「じゃあ頼むわ…」

「石鹸ちょうだい」

 尚美に石鹸を渡す一生。彼女は洗い方を真似て手で泡を塗り付けていく。
 マッサージされるような心地良さに身を委ねていると、

「アッ!手が滑った!」

 尚美の手が、一生の股間辺りに触れた。思わずその手を払い除ける。

「オマエ、何、フザけとんや!」

 尚美は後から笑っている。

「さっきのおかえしや」

 彼女は両腕を一生の首に巻きつけ、豊満な乳房を彼の背中に密着させて耳元で囁いた。

「…ねっ……しよ……」

 その時、一生の身体は、抑えきれない欲望に支配された。




───


 一生が尚美と関係を持って3週間が過ぎようとしていた。
 あの日以来、尚美とは2週間に1度の割合で、セックスを繰り返えす間柄になっていた。

 そのために、一生は聡美との距離を置くようになってしまった。
 これは何も、彼が聡美の事を嫌いになった訳ではなく、むしろ〈聡美に対する後めたさ〉から出た行動だった。

 一生にすれば、尚美との間柄は〈ベッドを共にする親密な友達〉と思うくらいで、〈将来を共にしたい〉聡美とは違った。

 だからこそ会いたくなかった。

 彼女に会えば、自身が行っている事の〈ほころび〉を取り繕わねばならなず、彼女はそれを必ずおかしいと思うだろう。

 一生は尚美との関係がバレて、聡美を失うかもしれない事が怖かった。

 だから、仕事の多忙さを理由に、連絡だけの関係を続けていた。


過ぎ去りし日々の最初へ 過ぎ去りし日々 35 過ぎ去りし日々 37 過ぎ去りし日々の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前