還らざる日々T-5
「…ねぇ、ラーメン食べよか?」
「オマエ、大丈夫か?」
「トイレに行ったらスッキリして。ねぇ、食べよ」
自身も小腹が空いた一生は、キッチンでカップ麺を作る。
出来上がり、ベッドに呼びに行くと尚美の姿が無かった。
「オイ!出来たで。どこ行ったんや?」
尚美はバスルームから現れた。
「ゴメン、ゴメン。風呂沸かしてたんよ。」
「オマエ、今から入るんか?酔うとる時は止めた方がええど」
「せやけど、顔もエライ事になってるもん」
「じゃあ、浸からず洗うだけにせぇ」
一生はそこで話を切ると〈じゃ食べよ〉と、カップ麺を食べだした。
「ハァ〜やっぱラーメン美味いわ〜っ」
「………」
「スープも温まるわ」
「………」
「何で黙っとるん?」
かき込むようにカップ麺を平らげた一生は、空のカップをテーブルに置いた。
「カップ麺は麺がのびるのが早いんや。オレ、固麺が好きやから間ぁ置くのがイヤなんよ」
そう言うと、ポケットからマールボロを取り出し火をつける。
尚美も彼の真似をして黙って食べだした。
「美味しかった。ウチちょっと…」
「ああ、風呂やな。あまり長湯するなや」
一生は彼女に背を向けたまま右手を軽く上げると、カップや割り箸を片づけた。
それが終わるとテーブル前でポ〇リを飲んでいた。
すると、
「お待ち〜っ、次入り」
振り向くと、裸にバスタオルを巻いた尚美が立っていた。
「オレ、帰るわ」
思わず一生は立ち上がり掛けたが、それを尚美が制する。
「帰えるなら、もうちょっと酔い醒まして帰り。
それよりソコで着がえたいから、アンタも風呂入れば?」
仕方なく、言われるままに一生は風呂に入った。
湯船に浸からず、洗面器でお湯を身体に掛ける。手で石鹸を泡立たせ、それを身体に塗り付けるように洗っていた。
その時だ。真後ろのドアーが開いた。振り向くと、バスタオルを取り去った尚美が立っていた。