還らざる日々T-4
「ここ何処!?」
一生に持たれかかるような姿勢で尚美は目を覚ました。
「空港横や…」
右手には、オレンジ色の照明灯に照らされた旅客機が何機も列なり、壮観さを感じさせていた。
先程までの失態を覚えてないのか、まだ酔いが醒めてないのか、彼女は一生に尋ねる。
「さっきの店は?」
「あそこは終わって、タクシーでオマエの家に向かってるトコや」
「…しもた」
「どないしてん?」
「屋台のラーメン食べて帰りたかった…」
呆れ顔の一生。
「運転っさん。この辺にコンビニ有る?有ったら寄ってくれる?」
そう言うと、タクシーは空港横から〇〇方面に向かいながら、一軒のコンビニ前に停まってくれた。
一生はカップ麺とポ〇リ・スウェットを買い込むと、タクシーに乗り込み、再度、彼女の自宅へと走りだした。
彼女の自宅前でタクシーを降りた。尚美は〈大丈夫〉と歩きだそうとするが、足元がおぼつかない。
一生は仕方なく左手で彼女を支え、右手にコンビニの袋を持って夜道の中を進んだ。
そして、彼女のアパートにたどり着いた。
「おい、部屋の鍵は?」
「…ジーンズの…ポケット」
右手で彼女の身体を後から支え、左手でズボンのポケットを探る一生。
「…ちょっと。…ダメやて…」
倒れ掛かる尚美を支える右手は彼女の胸辺りを抱え、左手がジーンズを介して下半身を触る恰好になった。
そのため、彼女は一生が求めていると思ってしまった。
「アホ!何、勘違いしとんのや。玄関の鍵探しとんじゃ」
ようやくジーンズのポケットから鍵を探しあて、玄関ドアーを開けた一生は、彼女を部屋のベッドに運んだ。
コンビニの袋からポ〇リを取り出しキャップを開ける。
「ホラ、これ飲め。明日、起きた時に楽だから」
尚美はポ〇リを受け取り、ゆっくりと数回に分けて飲み干すと、ベッドから身を起こした。