ヒメゴト〜a scond time〜-1
「抱いて………」
薄暗いオフィスの中、
特攻を仕掛けられ、
陽介はただただ、
目の前の美映を見つめていた。
見てはいけないと思いながらも、
形の良い豊満なバストを目の辺りにし、
思わず視線が落ちる。
「ねぇ…触って…?」
その美映の言葉に無意識にすぅ、っと手が伸び、
触るか触らないかの所で、ピタリと止まった。
(ここでもし高野を抱いたらどうなるんだ?俺はいつも流されて女を抱くのか?…いや…)
陽介は手を引き、
思いを確かめる様にぐっと握った。
「高野…、俺……出来ないよ…」
またうつ向き、
陽介はハッキリと美映に伝えた。
今日一日ずっと、
麻衣子の顔が頭から離れていないのに、
ここで他の女に手を出してしまったら、
更に気持ちが分からなくなってしまう。
今は自分が麻衣子をどう思っているかもハッキリしない。
好きとか嫌いとか、
そんな感情はしばらく押し殺していた陽介にとって、今までの麻衣子との情事でさえ、
それを判別するに値しなかった。
「………え?」
美映は予想外の陽介の言葉を受け入れられず、
陽介ににじりよる。
「…今…何て……?」
距離を詰められ、
お互いの膝がぶつかる。
「悪いな…」
そう言い残すと陽介は直ぐ様立ち上がり、
美映を見向きもせず、
その場を後にする。
フロアを出る瞬間、
美映が何か叫んでいたが、足を止める事なく、
帰路に着いた。
―――翌日夕方…
昨晩は家に着いてからも泣き続け、
良く眠れもせずに、
腫らした目をして出勤してしまった事に、麻衣子は酷く後悔していた。
何かありました!と顔が語っているのだ。
同僚達が心配そうに声をかけてくれたが、
その度に言い訳をし続けた事にも、
罪悪感でいっぱいだった。
幸か不幸か今日は陽介に会っていない。