ヒメゴト〜a scond time〜-4
―――麻衣子の部屋に着き…
「お邪魔します。」
陽介は綺麗に靴を並べ、
一声掛けてから部屋に入った。
この間と同じくタクシーで帰宅したが、
車内の様子は至って重々しかった。
行き先を告げてからお互い一言も発せずにいた。
「あ、楽にして下さい。今何か飲み物を…」
麻衣子はあたふたしながら靴を脱ぎ、鍵を閉め、電気を点け、
狭い1Kのマンションのキッチンに立つ。
冷蔵庫を開くと、
気のきいた飲み物は一つもなく、
麻衣子を落ち込ませた。
「お茶かコーヒーしか無いんですが…」
陽介はふふっ、と笑い、
「じゃあコーヒーで」
と告げ、
上着を脱ぎ、
ベッドの上に腰掛け、
煙草を取り出した。
火をつけようと煙草をくわえた所で、
手が止まった。
(灰皿はないよな…)
陽介はそのまま煙草をシャツのポケットにしまい、
忙しくコーヒーの準備をする麻衣子を見て、
ふつふつ、と沸き上がって来る感情を押し殺した。
「お待たせしました。あ!灰皿…」
グラスを両手に持ち、
小さなテーブルの上に置くと、
また麻衣子はキッチンに消え、
可愛らしい灰皿を手にし、陽介の前に置いた。
「禁煙じゃないの?」
陽介の問いかけに、
麻衣子は笑顔で
「大丈夫ですよ。気にしないで下さい。」
と、答えると陽介の対面に腰を下ろし、
上着を脱いだ。
しまった煙草を再び取り出し、火をつけ、
大きく肺まで吸い込む。
ふぅー、と溜め息混じりに煙を吐き出しつつ、
麻衣子の様子を伺うと、
うつ向いていた。
お互いに話を切り出せないまま、
しばらく時が流れ、
煙草を灰皿に押し付け、
痺を切らせた陽介がゆっくり口を開いた。
「こっち来て」
麻衣子はドキドキしながら立ち上がり、
少し間を開けて陽介の隣に座った。
すると陽介は麻衣子の手を取り、
ぐっ、と引っ張った。