ヒメゴト〜a scond time〜-2
ちらほらと社員が帰路に着く中、
麻衣子はまだ自分のデスクに腰掛け、
大きく溜め息を吐く。
(今日は西田くんにも会えてないし…、帰ろ…)
麻衣子は気を落とし、
PCを終了する為、画面を向くと、
一枚の紙切れが画面隅に貼り付けてあった。
麻衣子は紙切れを手に取り内容を確認してみる。
『これに気付いたら連絡して。 西田』
陽介からのメッセージに、驚き、戸惑いながらも、
麻衣子は直ぐ様携帯を取り出し、
メール画面を開く。
『メモ見ました。』
手早くそう打つと、
早々に送信した。
いつ貼ったのか…?
陽介は近くにいるのか…?
麻衣子は終業後も残っている事が多かった。
なので度々帰宅が最後のときがあった。
広々としたフロアに居る事が、麻衣子にとってとても心休まる時間だった。
ピルルルル…
近くで着信音が聞こえる。
麻衣子は辺りを見回すと、フロア一番手前から陽介が歩いてくるのが見えた。
ぼーっ、としたまま歩いていた陽介もまた、
麻衣子に気付いた。
「よぉ」
陽介は携帯を見ることはせずに、
段々と麻衣子の方へ近付いた。
「お疲れ様です…」
「お疲れ」
陽介は麻衣子の隣にふぅ、と腰を下ろし、
だるそうにネクタイを緩めた。
「西田さんもまだ…いらっしゃったんですね…」
どうしたんですか、と言いかけてその言葉を飲み込んだ。
煩わしいかな、と思ったのだ。
陽介は誰にでも優しく、
誰にでも明るく、
そして誰にも感情を見せていない、
と麻衣子は思っていた。
極めて明るく振る舞っていても、
いつも陰が見え隠れし、
陰陽の加減が絶妙で、
次第に見つめる日が多くなっていった。
もちろんその容姿も物凄く整っており、
社内人気は常に上位だったが、
浮わついた噂を一切耳にしないので、
憧れが好意に変わった女子社員も多いだろう。
麻衣子もその一人だ。
そんな陽介に何度か抱かれる内に、
独占欲が生まれてきた。
醜いとは思いながらも、
既に抑えられない程に膨れ上がっていた。