『 突発 』-1
深夜の県道。
県道といえど、交通量は皆無。1時間に1台通るか通らないかだ。
「………っは、は、っ」
暗闇の道を、俺はひた走る。
足はもつれ、靴は脱げて、目の焦点もうまく定まらない。
だが、止まってはならないのだ。止まっては。
狂うように息を吸いながら、首を回し後ろを確認する。
まだ、まだまだまだまだまだだ。
暗闇の中の更なる暗闇。それは人の形をしていた。
その暗闇は、俺との距離を詰めるように近づいてくる。息切れた様子は無く、常に、常に追いつく機会を伺っているようだった。
思考が停止しかける。
なんで? なんで俺なんだ? なぜ追ってくる?
疑問符のみが頭を埋め尽くす。
走れ。死ぬぞ。ほら、走れ。追い付かれたらヤバい。絶対にヤバい。捕まるな。走れ。足よ動け。死ぬぞ、ヤバい。死ぬ。ほら、10m9m8m7m6m5m4、3、2、1
「つかまえた」