やっぱすっきゃねん!Ulast-18
「いちぃっ!」
速い打球。トップスピンで滑るようにバウンドして正面に飛んで来た。
「クッ!」
グローブのポケットで掴む佳代。掌に衝撃が走る。
「…次ィ!」
大きく右に逸れる打球。横っ飛びでグローブを伸ばす。
「さっさと立て!次ィ!」
高いバウンド。佳代は飛び上がって打球を掴む。
次々に打ち込んで来る。トップスピン、バックスピン、高低のバウンドやライナー。
正面や左右にふるなど、様々な打球が浴びせられる。
佳代も100球目まではなんとかに捕れていたが、100球を超えたあたりから息は乱れ、脚から力が抜けだした。
ようやく300球が終わり、ボールでいっぱいになったカゴを一哉の元に持っていく佳代。
「…あと200球だ。今からが本番だ…」
「…は…はい…」
息も絶え々の佳代。再びバックネットで構えるが、ヒザは震えて構えが高くなる。
「いくぞ!」
今までよりさらに強い打球を放つ。ショート・バウンド。
佳代は身体に当てながらボールを前に落とす。
いつしか、一哉の額からも汗が吹き出ていた。
350球を超えた。横っ飛びの打球。佳代は、なんとか反応してボールを掴んだ。
「…ハッ!…ハッ!…ハッ!」
激しい息遣いと、疲労で身体が動かない。
「どうした!さっさと起きんか!」
「…ハァ…ハァ…」
佳代は身体を起こそうとするが、腕も脚も震えて力が入らない。
「さっさとしろ!」
寝転がる佳代に、一哉は容赦無くボールを叩いた。打球は腿に当たった。
「ガァッ!!…あぁっ…」
腿を抑えて身を屈める。だが、次の打球がマスクに当たった。
「起きろ!まだ勝負は終わっとらんぞ!」
フラつき、ようやく起き上がった佳代。だが、その視線は定まっていない。
それでも打って行く一哉。
定まらない視線で打球を掴もうとするが、ほとんどを身体で受けていた。