やっぱすっきゃねん!Ulast-16
同様に守備も、内野に中継した方が素早い返球が出来るのに、自分でなんとかしようとダイレクトで返球して無駄な点を与えるなどミスを繰り返した。
対して田畑はバッティングで打てないと分かると、ボールを振らず、ピッチャーによりたくさんの球を投げさせ。
また、守備にしても練習で行っった通り、無難にこなした。
こうして、2週間のAB戦を終え、誰をライトのレギュラーにするかは明らかだった。
「来週、東海中学との練習試合のメンバーを発表する」
永井は、折り畳んだ紙をポケットから取り出し広げた。
「ピッチャー直也、稲森、淳。キャッチャー達也、下賀茂。ファースト……」
ポジション別に次々と呼ぶ永井。
呼ばれた部員は、弾けるような声で答えていく。
「……センター、久米。ライト、田畑…」
初戦のメンバーに佳代の名前はなかった。
「…本当にアレで良かったんですか?」
職員室。葛城の心配を他所に一哉は冷ややかな態度だ。
「仕方ありません。AB戦じゃ、個人プレイに走り過ぎてバッティングも守備もメチャクチャでしたから。アレじゃ周りが迷惑します」
その時、職員室の扉が開いた。永井達の視線が集中する。
そこには佳代が立っていた。
「…監督。お話があります」
そう言って、そろそろと職員室に入って来た。
「どうしたんだ?」
「…その、来週からの練習試合。何故、私はダメなんですか?」
質問する佳代。永井は困った顔をして口を開いた。
「それは自分でも分かってるだろう?AB戦で守備もバッティングも、周りが見えていない。
あれでは使いたくても使えない…」
「…でも、私は教育係をしながら自分の練習もこなしてました。
なのに、練習試合じゃ外されるなんて……」
その時、一哉が割って入った。
「オレが監督に頼んだんだ」
「…藤野コーチ…?」
意外と言った表情を一哉に向ける佳代。
「今のオマエじゃ皆が迷惑する。試合に使わないでくれってな」
「い、いくらなんでも酷いじゃないですか!」
「何故だ?守備もバッティングも崩してるオマエじゃ、周りが迷惑する。
しかも控えの田畑の方は調子が良い。となれば、田畑を使うのが当然だろう」
みるみる佳代の顔色が変わった。