やっぱすっきゃねん!Ulast-14
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「修。あと1ヶ月だよ。ちゃんと走り込みやってる?」
「やっと4キロ走れるようになったよ」
日曜の夕食時。
定番の煮込みハンバーグに温野菜の付け合わせを食べながら、お喋りする佳代と修。
後、ひと月もすれば、いよいよ修も中学生になる。
野球部の練習の凄さは、散々佳代におどかられているので、放課後、自分なりに練習しているのだ。
「大丈夫なの?毎日5キロだよ」
佳代はそう言いながら、貪るように食事を摂っている。
「佳代!もうちょっと落ち着いて食べなさい。それから、こっちも食べるのよ」
加奈は叱責すると、佳代に皿を渡した。
それは追加の温野菜だった。
思わず顔をしかめる佳代。
「お母さ〜ん…こんなに野菜ばっか、食べれないよ」
「ダメよ。ご飯や肉も大事だけれど、野菜はもっと大事なの。
ゆっくりでも良いから食べなさい」
ジャガイモ、人参、ブロッコリー、さやインゲン、南瓜などが皿に乗っている。
「…うぅ…」
佳代は、仕方なく野菜をハンバーグ・ソースに浸し、次々と口に放り込む。
ほとんど味などしない。義務的に食べてるだけだ。
「…うえぇ…終わった…」
苦手な野菜を何とか食べ終えた佳代。
これは加奈が大学時代、コーチから受けた食事法だった。
運動する場合、タンパク質や炭水化物も大事だがビタミンやミネラルも重要だ。そこで、加奈は無理にでもたくさんの野菜を摂らせるようにしたのだ。
「…う〜、気持ち悪い。腹ごなしにバット振ってくる」
佳代は使った食器を流しに置くと、ダイニングから出て行ってしまった。
その姿を目で追いながら、修がポツリと言った。
「姉ちゃん。前にも増して食べるようになったよね」
茶碗山盛りのご飯、カレー皿いっぱいの温野菜、それに大判のハンバーグ2個。確かに相当の量だ。
「成長期なんでしょ。それに、練習量も増えてるみたいだし…」
「…そういえば、以前は痩せてたのに、この前なんか身体付きが大きくなって。脚も太くなって」
その言葉に、加奈は思わず修のオデコを叩いた。