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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!Ulast-13

「…こう?」

「そう。そこから利腕のヒジを固定して、ヒジから先を真っ直ぐ伸ばすんだ」

 言われるままにやってみると、頭の前辺りに指先が見える。

「コーチが言うには、その位置でボールを離せば、最も肩やヒジに負担を掛からないそうだ」

「へぇ、これがねえ…」

 再び感心する佳代。

「あと1ヶ月半もすれば練習試合が始まるだろ。それまでに、ある程度投げ方を覚え込ませないとな…」

 そう答える直也の目は嬉しそうだった。




───


 それから、瞬く間に1ヶ月が過ぎた。

 朝晩の寒さは相変わらずだが、昼間は幾分、暖かさを感じさせる。

 2月になり、土日の練習を1時間増やした事もあり、練習も、より複雑さを増してきた。

 最初は簡単なノックだけだったのが、ランナーを想定しての守備位置の変更や連係プレー、また、外野を抜かれた場合やバント処理など、あらゆる守備機会に対応出来るよう練習に時間を掛けるようになった。

 また、バッティング練習も同様で、個人々が打つだけで無く、バントやエンドラン、進塁打や盗塁など、細かい攻撃パターンの練習を繰り返すまでになった。

 この頃、直也と稲森はブルペンに入り、変化球も混じえて7〜8割力でピッチングが出来るほどに仕上がっていた。




 練習を教え、職員室で休憩を取る指導者達。

「今のところ、順調過ぎるくらいに来てますね」

 開口一番。永井は柔らかな表情でそう言った。

「…ただ、淳に和田、それに佳代が遅れてますね」

 一哉は異を唱えるように、進捗状況を語った。

「橋本は、始めてまだ2ヶ月足らずですし、和田は1年生ですから。
 でも、佳代も遅れてるんですか?」

 訝しげな表情を浮かべる永井。

「バッティング練習では当ててはいますが、上下の動きがバラバラです。まだ、しばらく掛かるでしょう」

「じゃあ、さ来週から始まる練習試合には?」

 葛城の問いかけに一哉は頷き、

「淳と和田は逆に試合慣れさせるために使うべきでしょう。
 ただ、佳代の場合はしばらく控えに回した方が…」

「では、来週から始めるAB戦は?」

「Aチームは田畑にしてBチームに回すのが良いでしょう」

 永井とやり取りする一哉に再び葛城が訊いた。

「ただ、本人は相当ショックでしょうね」

「仕方ありません。アイツは原点を忘れてバッティングを崩したんですから。
 使い者にならないなら、控えに回すだけです」

 そう答えた一哉の顔は、どこか寂しげだった。


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