一人舞台-6
「これじゃ、この小説と一緒だな」
俺は鼻を鳴らす。俺は一人、舞台の上で演じ続けている。ひたすら、終わりの来ない物語を。
「そいつはどうかな? この物語には続きがあるんだぜ」
そう言って中嶋は、床に落ちていた何枚かの原稿を広い上げ俺に差し出した。
中嶋の言ってる事の意味が分からず、取りあえず差し出された原稿を読むことにした。
『男は諦めかけていた。もうこの舞台から自分は去るべきではないかと。そんなある日、小さな拍手が観客席から聞こえた。
「あなたの一人舞台、いつも見ていました」
そう言って現れたのは一人の少女だった。少女は男の手を握りこう言った。
「あなたには才能があるのです。誰が何て言おうと、私はあなたの演じる役が好きですよ」
美しいその言葉に、男はもう一度舞台に立つ決心をする。』
俺は原稿に目を落としたまま言った。
「中嶋、今日は帰ってくれないか?」
扉の開く音がする。
「待ってるぜ」
そう言った中嶋の顔は笑っていたような気がした。