誰も幸せになんかなれない-1
好きな人がいた。
彼は私にこう言った。
「俺、好きな人がいるんだ。協力してくれる?」
いつもの、私が1番好きな、屈託のない笑顔で。
「私が呼ぶから告っちゃいな」
私は彼にそう言った。自信なさげな彼の背中を無理矢理押すように。
「頑張ってみるね」
彼は言った。
泣きそうな笑顔で。
でも、本当に泣きそうだったのは私。
結果はNO。
彼は泣いていた。
彼女も泣いていた。
私は知っていた。
彼女には、既に付き合っている人がいることを。
本当は、他の女の子が好きな彼を見たくなかったから、だから背中を押した。
早く彼の恋を終わらせるために。
そして、彼が私を好きになってくれるように。
実際はそんなこと、起こるはずがない。
私は知っていた。
彼からすれば、私はただの『友人』でしかないことを。そして、彼の恋に私が加わることはないということを。
泣いている彼の隣で、私も泣いた。
誰も、幸せになんかなれない。
それでも、私は彼が好きで、彼は彼女が好きで。
私たち、いつまで傷つけ合うのかな──?