不確かな可能性-1
机の上にある一枚のプリント。『進路希望調査』と書いてある。
私はまだ何も書き込まれていないそれを、ただ見つめていた。
私も今年で高3だ。進路について嫌でも考えなければいけない。
しかし、私には1年後の自分の姿が想像できずにいた。
特に将来なりたい職業もない。だからといって、安易に適当な大学や専門学校を選んではいけないと思うし、それでいて就職はなるべくなら避けたいと思う自分がいる。
私はどうしたいんだろう。
しばらく考え込んだあげく、私は未だ白紙のそれを鞄に突っ込み、ベッドに体を移動させて考えることを放棄した。
──翌日。
案の定私は放課後、担任に呼び出された。
「河合、これは何だ」
「何って…」
担任が私に見せたのは白紙の進路希望調査書。無論、私が何も書かずに提出したものだ。
「お前、もう少し将来のことを考えろよ。今何年生だと思ってんだよ」
「3年生ですよ」
そう言うと、彼は机を叩いて怒鳴った。
「そんなのは分かってんだよ!」
私は下を向く。
「いい加減にしろよ、お前。そんな適当に考えられる程、社会は甘くねぇんだよ。世の中なめてんじゃねぇよ」
「別にそんなつもりじゃ「じゃあ何だ?だったら書けばいいだろ。進学か、就職か、決めてもらわないと、こっちだって対応できないだろ」
そう言って担任は私に白紙の進路希望調査書を返した。
「明後日までにどっちか書け」
そうして私は職員室から追い出された。
別に何も考えていないわけでもないし、社会をなめてるわけじゃない。
就職か、進学か。
私には、どちらの道もまだ見えていない。