投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「意地悪なキスの痕」
【同性愛♂ 官能小説】

「意地悪なキスの痕」の最初へ 「意地悪なキスの痕」 8 「意地悪なキスの痕」 10 「意地悪なキスの痕」の最後へ

「意地悪なキスの痕」-9

「…そんなに、嫌か…」

「ん…ぁ」

「信じたくないのならそれでもいい」

「ふ、あぁっ!」

吐息を零すような切ない声。
快楽と痛みで、わけが分からなくなる。
どうにか、思考を繋ぎとめておきたくてシーツに指をついている彼の手を握った。
これが最後になるかも知れないと、離したくないとでも言うように彼を締め付けてしまっていた。

「……お前だけだ」

「っ…」

うわごとのように囁かれる言葉。
それを必死に捕らえたくて。
波にゆられている。止まらない刺激。
まるで照れ隠しのように。
顔さえ見せてくれないのに、強く感じるのは。

(課長…っ)

どくん、と穿たれる熱い大量の体液が精神を侵略する。
彼の迸りを受け、俺も激しい逐精を迎えていた。
もう抵抗する力なんて残っていない。何もかも奪われつくし、俺はベッドに横たわった。
そんな俺の身体から、彼はゆっくりと拘束を解く。

「妻が居ればいいと、そう思ってるのか?」

「……」

「俺から離れる口実を探しているのか…?」

「そ、んなこと…」

(こんな顔…初めてだ)

 こんなにも縋りつくような瞳で見つめられたのも、こんなにも掠れた声を聞くのも。

「何が聞きたい」

「あ、あ…」

「何が知りたいんだ。何が分からないんだ」

「…っ」

乾いた指が、頬をなぞる。
切なくて、切なくて声が出ない。
無意識に俺も、彼に指を伸ばしていた。
触れたのを合図にして、所有物のように強く抱きしめられる。
息が止まりそうなほど、きつく。

「…愛している」

言葉に後押しするかのような強引で、意地悪なキスが心に痕を残す。
それは紛れもない、俺が一番欲しかった痕(しるし)だった。


「意地悪なキスの痕」の最初へ 「意地悪なキスの痕」 8 「意地悪なキスの痕」 10 「意地悪なキスの痕」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前