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「黄昏の至宝」
【ファンタジー 官能小説】

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「黄昏の至宝」-1

昔々、あるところに小さな国がありました。
コランダムと呼ばれたその国は、その名の通り質の良い宝石が産出することで有名でした。
そして、この国の宝は鉱石だけではありません。
【ラルム】と呼ばれる第三王女は、それはそれは美しく、【黄昏の至宝】として国中の人々から愛でられていました。

しかし、この国の平和は長くは続きませんでした。
コランダムの繁栄を妬んだ近隣諸国が共謀して戦争を仕掛けてきたのです。
ラルム姫はやっとの思いで逃げ出しました。
たった一人の騎士を連れて。

こうして【紺碧の絶望】と呼ばれた異国に嫁いだ姉姫の元へと、助けを求めるラルム姫の辛く長い旅が始まったのです。


*****


「ラルム姫、申し訳ありません。今日は祭りで宿が混んでいて一部屋しか取れず…。自分はドアの外で見張りを続けておりますので、何かありましたら、何なりとお声掛けください」

その夜、ラルム姫と騎士であるジェイドが泊まった宿は今までの旅の中で最低ランクの宿であった。
二人は刺客を欺くため、旅芸人に身をやつしていた。本物の姫と騎士が、道化の姫と騎士の姿をしているのである。
が、騎士ジェイドの持つ槍は決して道化の小道具ではなく、ひとたび鞘を払えば空をも切り裂くうねりを見せた。
幸いなことに追っ手に見つかった気配はないが、祭りに集まる人々の財布に狙いを付けた追い剥ぎが闊歩していた。二人のパーティーも立て続けに4組の盗賊に襲われ何とか追い払ったもののジェイドはもうヘトヘトだった。
ドアへ向かう身体がグラリと傾いだ。

「ジェイド!」

ラルム姫が慌てて駆け寄る。

「貴方もう国を出てから1週間もろくに寝てないじゃない!今夜くらいゆっくりと休んだって、神様は咎めたりなんてしないわ。私はいいから、今夜は貴方がベッドを使いなさい」


甘い誘惑が疲れきった騎士ジェイドの耳に心地よい。

しかし、如何なることがあろうとも自分はラルム姫に仕える騎士だ。
主を差し置いて床に着くことなどは許されていない。

「無理をしないで。貴方が身体を壊したら私ひとりでどうやってお姉さまのところまで行けばいいのです」

自分本位にも見えるその台詞に込められた想いは、姫の精一杯の優しさだった。

「では、お言葉に甘えて今夜は床の上で眠らせてください」

今のジェイドには、それでも充分な至福だった。
疲れた身体を入り口の前にゴロリと横たえる。
あっと言う間に眠りについたジェイドは、その後ラルム姫が叩いたりつねったりしても目覚める様子は見られなかった。

多少、不満げな表情を見せていたラルム姫も、ジェイドがピクリともしないので程なく諦め寝台へ身を潜らせる。
慣れない旅路で疲れはてていたのは姫も同じだった。
姫の口から可愛らしい寝息が聞こえるのに、大した時間は必要なかった。


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