やっぱすっきゃねん!UH-7
「ねぇ、ちょっと付いて来てくれる?」
夕方。練習を終えた帰り道。佳代は直也を誘った。
「付いて来いって何処に?」
「〇〇スポーツ…」
2人はショッピング・モールまでの道を急ぐ。
「何を買うんだ?」
「うんっ!バットとグローブを買い替えようと思って」
そう答えた顔は満面の笑みを湛えている。
「…オマエ、そんなに嬉しそうな顔で…よほど良いヤツがあったのか?」
「グローブは大きさの割に軽くて芯もしっかりしてて良かったの。それより聞いて!バットがスゴいの!」
直也は佳代の説明に興味津々だ。2人は慌ててスポーツ用品店へと進んだ。
「こんにちは!」
店員は佳代を見た途端、奥からバットを持って現れる。
それを受け取った瞬間、彼女は、まるで恋人にでも会ったように頬を上気させていた。
「ホラッ!これよ」
そのはしゃぎように、直也はバットを手に取るとグリップを握って軽く縦に振った。
「…なんだか…軽過ぎてオモチャみたいだな…」
その重さは700グラム。
通常、中学で使うバットは700グラム後半から800グラム程度だから、直也からすれば非常に軽く感じられた。
だが、佳代にはこの重さが合ってるようだ。
「…とにかく、振り抜いた時のグリップの締まり具合が私には合ってるんだ…」
鈍い黒光りのバット。
直也は太い部分を手で軽く叩いてみた。アルミのような金属音がしない。
「…これ、アルミじゃなくてカーボン製だ。公式戦で使えるのか?」
「一応、連盟公認バットだから使えるよ」
佳代はそう答えると、バットとグローブを持ってレジへと向かった。
「39,780円です」
「…!さんまん…きゅうせんって、オマエ…」
金額に驚く直也を背に、佳代は躊躇する事無く財布から1万円札4枚を店員に渡した。
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