やっぱすっきゃねん!UH-5
「お姉ちゃんは、部活をこなしながら頑張ってんだから、アンタもしっかりなさいよ」
加奈の厳しい叱責にさらに頭を垂れる修。健司は、そんな息子の頭に手を乗せ、
「次はもう少し頑張るよな…」
優しく叱るとそこで話を終え、夕食を摂ろうとする。
「ところでさ、お願いがあるの」
テーブルから身を乗り出して話掛ける佳代。健司は箸を進めながら訊いた。
「なんだい?改まって…」
「実は……」
佳代は、昼間、スポーツ用品店で出会ったバットの事を、熱っぽく語り続ける。
「…あんな感覚初めてだった…」
健司は頷いて箸を置いた。
「話は分かった。で、佳代はどうしたいんだい?」
「今年のクリスマス・プレゼント、そのバットが欲しいの」
2人のやりとりに加奈も割って入る。
「それって、幾らするの?」
「…1万…7千円…」
言い難そうに答える佳代。
「1万7千円!って、いつもの3倍以上の金額じゃ…」
驚きの声を出す加奈を、健司の右手が制する。
「…確かに高いけど、貯金やお年玉を使えば、自分で買えない金額じゃないだろ?」
「それは、そうだけど…」
佳代は困った表情で、健司に思いを伝えた。
「来年が最後だから、バットもだけどグローブも新しくしたいの」
「なるほど…」
健司はしばらく俯き黙っていたが、やがて顔を上げると佳代に言った。
「…バットでいいんだね?」
「買ってくれる!」
思わず破顔する佳代。
「まぁ、今回は勉強も頑張ったから特別だ」
「ヤッタァッ!!お父さん、ありがとう!」
思いが叶った事に手放しで喜ぶ佳代。だが、そんな娘に健司は〈但し〉と言って釘を差す。
「冬休みと春休みの間、夕方に部活が終わったら、お母さんの手伝いをする事」
「エエッ!お母さんの…?」
健司の条件に難しい顔をする佳代。対して健司は諭すように言った。