やっぱすっきゃねん!UH-2
終業式も午前中に終わり、部活も休みなので、佳代は尚美と有理の3人で学校を後にする。
「ちょっと寄って行こうよ」
帰り道の途中、佳代は2人を近くのショッピング・モールに誘った。
入口の両サイドには巨大なツリーが置かれ、中に入ると、売場や通路の天井には、きらびやかなイルミネーションが飾られている。
まさにクリスマス・ムード一色だ。
3人は通路右手に並ぶフード・コーナーにあるハンバーガー・ショップに入った。
「大したモノじゃないけど…」
お礼のつもりなのだろう。佳代はバーガーセットの乗ったトレイを2人に渡す。
すると、尚美と有理は〈じゃあ遠慮無く〉と、トレイを受け取り、外が見える窓際のテーブルに着いた。
ハンバーガーを食べながら談笑する3人。
「でも、よく頑張ったねえ」
「有理ちゃんのおかげだよ。本当にありがとうございました!」
再び頭を下げる佳代。
「そんな…佳代ちゃんの頑張りだし、私も教える事で復習になってるの…」
有理は、やや俯いて言葉を続ける。
「毎日、あんなに練習してる佳代ちゃん見てたら手助けしたくなって…」
「うそっ!見てたの?」
驚く佳代。有理は小さく頷いた。
「朝とか、生徒会の会合後とかで…」
「私も体育館から見てるよ。男子に混じって、いっつもグランド走り回って…」
と、尚美も割って入る。2人の言葉に佳代は胸が熱くなる思いだった。
食事も終え、店を出ると、
「あの…ちょっと付き合ってくれる?」
遠慮勝ちに尋ねる佳代。
「私は良いわよ。アンタの事だから、どうせ〇〇スポーツなんでしょ?」
「まぁ、そうだけど…」
そこは2階奥にあるスポーツ用品店だった。
通路沿いにある店々は様々なイルミネーションで飾られてたが、そんなモノには目もくれず、佳代は目的の場所に向かった。
そのスポーツ用品店は、この界隈では1番の売場面積を誇り、品数も豊富だ。
今は冬なので、スキーやスノーボードなどが売場の主力で、野球用品は隅の方に追いやられている。
「どれがいいなかぁ…」
佳代は陳列してあるグローブを手に取り、右手に着けて感触を確かめる。
「私、あっち見てるから…」
尚美は自分のモノでも見ようと、別の用品売場に行ってしまった。
「佳代ちゃん。グローブ買うの?」
後で見ている有理が問いかける。
「…うん…来年が最後だから、貯金とお年玉で買いたいなぁって…」
そう言って幾つかのグローブを試していた。