やっぱすっきゃねん!UH-13
「…実は、打撃投手をやりたいのですが、そのためのキャッチャーが必要で…」
「打撃投手って、藤野さんがですか!?」
2人は驚きの声をあげた。一哉は頷くと言葉を続ける。
「…一応、2月にはと考え、現在、準備中ですが…
それと、野球は守りのスポーツです。その要であるキャッチャーの指導を、経験者である貴方にやって頂ければ、仰った思いも杞憂に終わるとハズです」
一哉の考えに葛城は折れた。
「…分かりました。じゃあ、練習開始日時は1月3日8時という事で…」
葛城はソファから立ち上がると、ニッコリ笑って一哉を見た。
「…私も、来年のために準備します」
「頼みますよ…」
一哉はそう言うと、同じように笑顔を葛城に向けるのだった。
───
明けて1月3日。
薄陽の射す中、中学校のグランドにユニフォーム姿の子供達が戻って来た。
凛とした空気に、部員達の吐く白い息が混じる。
永井に葛城、そして一哉が部員達に相対して並ぶ。
3人が新年の挨拶を終えた後、永井は唐突に言った。
「準備運動をしたら、〇〇神社までランニングで行くぞ」
突然の予定にざわめく部員達。そこは中学校から3キロほど離れた場所にある神社だった。
皆は等間隔に広がると、軽い準備運動を始めた。
そんな中、佳代は直也に声を掛ける。
「ねぇ、ナオヤ」
「なんだ?」
「今から神社って…何しに行くのかね?」
ヒザや足首を回し動かす直也。
「さあな。今年の願いでも参りに行くんじゃねぇのか」
(…願いって…あそこ、縁結びの神社じゃ…)
佳代の思いを他所に、直也や他の部員達は黙々と準備運動を進めていく。
「それじゃ出発するぞ!」
永井の号令の後、部員達は神社までの道を駆け出して行った。
───