やっぱすっきゃねん!UH-10
「はい、それ持って行って」
「…は〜い…」
加奈の言葉に佳代は思い切りイヤな顔で、料理の盛られた皿をテーブルに運んで行く。
夜。佳代はキッチンで加奈のとなりに立っていた。夕食の準備の手伝い。その後は、後片ずけも待っている。
しかも、今日はクリスマス。
普段の料理の他、クリスマスの料理も運ばねばならない。
そんな不満いっぱいの佳代に、加奈は喜々とした表情で語り掛ける。
「明日からは料理のやり方も教えてあげるから」
「エエーッ!もう、これ以上手伝いを増やさないでよぉ」
ツラそうな顔を全面に表す佳代。しかし、加奈は気にした様子も無く、
「何、言ってるの!私が遅い時なんか、カップ麺やお菓子ばっかり食べてるくせに。
運動やってるのに、そんなのばかり食べてちゃ身体に良くないわよ」
そう叱責する。もっともな意見に、佳代は返す言葉も無く盛られた皿を持った。
加奈も同じように皿を持つ。
「簡単なヤツから教えてあげるから…」
「…は〜い…」
笑顔で語り掛ける加奈に対し、佳代は再び不満顔を向けるのだった。
テーブルには所狭しと料理が並べられている。
すき焼きに野菜サラダ、チキンライス。これに、ロールケーキとフライドチキン、シャンパンにジュース。
実に日本のクリスマスらしい夕食。
「佳代。お父さんと修を呼んで来て」
「わかった」
佳代は頷くと、リビングへと向かった。
───
翌朝。ストレッチをする佳代の頬は弛みっぱなしだ。それもストレッチの時だけで無く、学校に来てからずっとだ。
それを見た直也は、すぐにピンときた。
「次っ!キャッチボール」
ストレッチを終えると、グランドの隅に置いたバッグに駆け寄る。バッグのファスナーを開くと、中から真新しく黒光りするグローブが姿を現した。
見つめる目から思わず笑みがこぼれる。
「それ、買ったんですか?!」
キャッチボール相手の田畑はすぐにグローブに気づくと、そばに駆け寄り覗き込んだ。
「昨日、〇〇スポーツに行ったの」
答える佳代は目を細める。