【笹原義弘】-4
「我慢しなくて、いいよ…」
泣きながら、そうみのりが言ってやっと気づいた。
「くっ…!!」
「あっ…ああっ、義弘っ…いいっ…!!」
ドクン、と脈打って、みのりの太ももに体液を放つ。
――みのりは、俺のことをずっと見てくれてた…のか…?
気づかなかった…
俺のことを、ずっと思ってくれて。
坂下さんのことを好きなことだって気づくほど見てくれていて。
なのに、俺は――
・・・・・・・・・・・・
「送るよ、みのり」
「どういう風の吹き回し?」
秘書課で、みのりが帰る準備をしながらニコッと笑う。
「送る」
さっきのトイレでのことが何もなかったみたいに、みのりが微笑むから。
まるで、みのりは坂下さんみたいだ。
坂下さんもあのとき、俺が坂下さんを好きだと言って、行為自体嫌がったはずなのに本気で抵抗しなかった。
傷つけたくないって気持ちが、俺のことを拒めなかったんだと思う。
みのりも――そうなんだな。
でもただひとつ坂下さんと違うのは――
「送ってくれるなら、ちょっと待って。更衣室行ってくる!」
パタパタと走るようにしてみのりは秘書課を出ていった。
俺の目からは勝手に涙が溢れてきて。
坂下さんを犯した後に言った言葉を思い出す。
「ずっと好きでした」なんて、言ったっけ。
「みのり…」
みのりは大人だ。
「好き」なんて一言すら出していない。
言わなければ、坂下さんも、俺も…傷つきはしなかったのに。
秘書課のドアが開いて、みのりが駆け寄ってくる。
「義弘、どうしたの?」
「何でも…ないよ…」
みのりは俺がそう言うと、クスッと笑う。いつもみたいに。
「あたしの前で我慢しなくていいんだからね」
みのりはそう言った――坂下さんを見てる俺を見てどれだけ我慢してたんだろう?
「…行くか」
「うん」
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