螺旋の邂逅-2
しばらく経ったある日
いつものように人目を盗んで会っていた時に、
「…結婚しよう、アイリーン」
と、ラティは唐突に言った。
「・・・なっ…何を言ってるの!?
私と貴方じゃ身分が違いすぎるし…それに、貴方の御家族がお許しにならないわ。」
と、私が言うと
「…家族なんかどうでもいい!
アイリーンは?イヤ?」
と、彼は私の瞳をみて言ってきた。
「・・イヤではないわ。
でも、無理よ!
…だって、貴方は貴族の総領息子、私は…農民・・」
私の家は農民の中では裕福なほうだったが、貴族の妻など無理に決まっている。良くてラティの家の使用人か数多居る妾の一人だろう。
「…なら、俺の家族が許したら結婚してくれる?」
と、彼は言った。
その言葉に私は、
「喜んで」
と、笑顔で答えた。
…しかし、彼の家族が認めるはずもなく、ラティと私は見事に引き離された。
そして、そのうち、ラティは戦争へ行くことになった。
出立前夜
いつもラティと隠れて会っていた場所に座り一人で月を眺めていると、
「…アイリーン?」
と、私を呼ぶ声がした。
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには彼がいた。
「…ラティ!!」
「…どうしたんだ?
こんな夜遅くに。」
と、ラティは私の隣に来て言った。
「貴方こそ…」
私は、彼の顔を直視することが出来なかった。
「俺はここに…と、いうかアイリーンにお別れを言うために来た」
「…どういうこと…?」
彼の言葉に、私は思わず彼の方を見た。
「一緒になれないなら生きてても・・ね」
そう言って彼は哀しそうに微笑んだ。
「何を言ってるの!?
私は…一緒になれなくても、貴方が無事に帰ってきて、それで普通に暮らしててくれれば…それでいいのに…」
私の目からは涙が溢れていた。
「…アイリーン…」
彼は私の頭を撫でてくれた。
「…もう夜が明けるね…。
じゃあ、いつか差別のない時代で逢えたら、その時は、結婚してくれる?」
と、彼は言った。
「もちろん」
私の答えを聞くと、彼は安堵の溜息を吐き、そして、
「愛してるよ、アイリーン」
と、言って涙を流している私を抱き締めてくれた。
「私も愛してるわ、ラティ…。」
そう答えて私は彼の背中に腕をまわした。
そして、その後、ラティは戦死した。
そして、私は、親の勧める人と結婚し、半年後、流行病で病死した。
しかし、あの時の『約束』が私を捕えていた。
続く