愛は地球を滅ぼす-1
地球最後の日、何をするか──?
世紀末はとうに過ぎた今、死語の塊の質問。だというのに。
「ジョーダンじゃねーっ!!」
オレは叫んだ。
なんでかって?他にすることがなかったからだ。
辺り一面、見渡す限り、とにかく何もかもがおかしい。
「ジョーダンだよなぁっ?」
オレは叫んだ。大きな大きな疑問符をつけて。
でも答えは返らなかった。
紛れもない現実だから。何度瞬きしてもオレの目に映り込むのだから。
高層だったマンション。四階建てだった学校。
今は昔。全てが過去系。全てが──崩壊。倒壊。壊滅。
東京だったタワー(文章おかしいから!)
空き家だった隣(どーでもいいっつの!)
オレのすぐ足元。幸福だった家…。
父さん。母さん。昌雄。どこだ?どこにいったんだ?
…そうだ、依吹。依吹は?依吹は!?
「いぶきーーっ!!」
オレは叫んだ。でも今度は叫んだだけじゃない。
瓦礫の中から愛車のチャリを探しだし、飛び乗った。
派手に隆起している道に悪戦苦闘しつつひたすらこぐ。
いつか約束した。ユビキリして腐れな質問にマジで答えた。
『地球最後の日は、一緒にいよう』
依吹はうなずいた。きっと待ってる。約束を守るために。
依吹を迎えに行く。それこそが、オレがするべき唯一のことだ。
−チャリはガラスですぐパンクして、途中からは走った。
いつもより倍ぐらいの時間をかけて依吹の家についた。
廃材の中横たわる、まるで眠り姫のような依吹。
慌てて駆け寄った。穏やかな呼吸の音。生きてる──。
ほっと息をついたが、起こすことは躊躇われた。
彼女には目覚めのキスの後、悪夢より残酷な現実が待つからだ。
抱きしめるようにして、膝の上にのせた。
せめて今だけでも、いい夢を見ていればいいと思う。
その時だった。たった一瞬のできごとだったけれど。
確かに人が空から降ってきて、何事もなく地面で着地した。
綺麗な顔立ちなのに、身長は2メートルくらい。男?女?
金髪の長いさらさらの髪。白いだぶだぶした服。
奇しげなこいつの正体をますます怪しいやつにする物的証拠。
真っ白な羽根。──天使!!
「宮沢篤武さんですね?」
「そうだ」
オレはもう驚かなかった。今更何を驚くことがあるんだ。
そうか、オレたちはもう死んでいるんだ…。
あたりまえだよな、この状況で生きているなんて不自然すぎる。
こいつはオレたちを迎えにきたというわけか。
「ひとつ、お願いがある。依吹はこのまま寝かせてあげてほしい」
「…」
「傷つくのはオレだけで充分だ…」
依吹。それでいいかな?お前には綺麗なままでいてほしいんだ。
「あの〜…」
「依吹…ごめんな。あっちでも一緒にいような」
「あのぉー!!」
「なんだようるせーな!!」
「何か勘違いされてますよね?」
「はっ!?」
「恐いですよぉ!そんなに睨まないでくださいよぉ」
「もともとこういう顔なんだよっ!早く天国につれてけよ」
「いや、だからーそれは勘違いです。あなたは死んでいません」
「ええっ!?」
「依吹さんもです。生きています」
生きている──?
「申し遅れました。私、こういうものです」
そう言って天使は小さな紙を差し出した。
「天使、佐藤…ってふざけてんのかてめぇっ!」
「いちいち怒らないでくださいよ。名刺は社会人の常識でしょう?」
「てめぇは社会人の前に地球人じゃねーだろっ!」
「篤武さん、そんな口のききかたじゃ天国に行けませんよ」
「やっぱり!!オレたちは死んでるんだろ!」
「だぁかぁらぁ〜生きてるって言ったじゃないですかぁ!」