Shall we Dance?-6
「だったら、今踊るか?」
「えっ?」
俺の提案にサチは首を傾げる。
そりゃそうだ。俺だって自分の言葉に驚いている。
「いや、な、俺、今日踊ったからステップ分かるし、最後の記念に、な」
あぁ、もう自分で何を言っているか分からない。
しかし、混乱している俺を見てサチはクスリと笑い、そして俺の前に手を差し伸べて言った。
「Shall we dance?」
「相変わらず、数学はできないのに英語はできるんだな」
俺は苦笑して、彼女の手をとった。
「チャー、チャチャチャーチャー」
「お前、音痴だな」
サチの歌に合わせて踊りながらそう言うと、彼女は頬をふくらました。
「じゃあ、ナオが歌ってみれば?」
「いいぜ。チャー、チャラッチャーチャー」
「…ナオだって人のこと言えないじゃん」
そう言うと、2人で顔を見合わせて笑った。
「さっきのセリフあったでしょ?『Shall we dance?』って。あれね、あたしの好きな映画にあるの」
「ふーん」
「1回やってみたかったんだ。でも、ちょっと恥ずかしかった」
「いいじゃん。それに高校生活最後のダンスの相手が俺だったなんて、最高に幸せだろ?」
「自意識過剰じゃないの?」
まぁ、ナオと踊れて楽しかったよ、と小さく呟いたサチが可愛くて愛おしくて、思わず抱きしめたくなったけど、今日は我慢しておこう。
フォークダンスのジンクスはまだ有効かな、なんて思ってしまう自分が、何だか子供みたいで可笑しくて、でも幸せだと感じた。