Shall we Dance?-3
職員室に戻って仕事にとりかかろうとする。が、先程の総太の言葉が気になって集中できない。
『俺だって、そんな余裕ないんですよ』
初めて見た。あんなにムキになるあいつを。
奴は機嫌が良くも悪くも笑顔で、たまに見せる悪意でさえも笑顔で表現していた。
何かあったのか?
あいつの笑顔を崩すほど、余裕を無くすほどの何かが。
だとしたら、それは俺にとっても脅威じゃないのか?
そう自問自答しているうちに外は暗くなり初めていて、慌てて俺は仕事を片付け始めた。
──体育祭当日。
今日は天気もいいし、風も気持ちいい。
まさに絶好の運動日和だ。
この青空の下、サチと総太は踊るのか。
そう考えると、空の青が憎らしく思えた。
「─山本先生」
教職員用テントの中で座っていると名前を呼ばれる。振り向くと、体育着を着たサチがいた。
真っ白な体育着を身にまとった白い肌は、このまま消えてしまいそうだ。
「おぉ、どうした?」
「…ううん。やっぱ何でもない」
サチはそう言いながら首を左右に小さく振る。サラサラの髪の毛も小刻みに揺れて、なんだか可愛かった。
「そうか?まぁ、今日は1日頑張れよ」
「うん」
サチがその場を離れると、すぐに他の女子のグループがこちらに来た。
「先生暇そう」
「確かに暇だな。俺もお前らと競技やりたいよ」
そう言ってため息をつく。けれど彼女らはそれを演技だと思ったようで、そんな俺を見て笑った。
「先生ヘコみ過ぎだしー。でも先生若いから高校生って言ってもいけそう」
あぁ、本当に高校生だったらどんなに幸せか。