Shall we Dance?-2
──そして放課後。
「失礼しまーっす」
「来たな」
約束通り数学資料室に総太はやって来た。
俺は総太を睨みつける。
「てめぇ、あの時の台詞、忘れてないだろな」
そう言うと、総太はニヤリと笑みを浮かべた。
「忘れてないですよ。俺、面白い噂聞いたんですよ」
「何だよ」
「先生も知ってんじゃないですか?フォークダンスのジンクス」
「……」
俺は思わず口ごもった。
まさか、こいつが知ってたなんて。
『フォークダンスのジンクス』というのは、この学校に昔からあるものらしい。
毎年、体育祭では生徒がなるだけ多くの人と踊れるように6曲踊るのだが、その最後の6曲目が終わったときにペアだった人が自分の好きな相手だとその想いは叶う、というのだ。
実際にそうなった者が毎年出ているため、生徒はおろか、先生でさえも知っているほど有名である。
「3年、1年、2年の順に女子はまわってくるんで、ちょうど俺の辺りに来るんじゃないかと思うんですよ」
「…そんなの、確率からしたら低いだろ」
「まぁ、確かにそうッスけどね。でも、先生と先輩が当たる確率よりは高いですよ」
「当たり前だ。俺とサチが当たる確率は0なんだから」
そう苦々しげに言うと、総太は真剣な顔でこちらを見て、こう言った。
「俺だって、そんな余裕ないんですよ」
そのまま奴は資料室から出て行った。