冷たい情愛Die Sekunde 最終話-8
「貴方には、未来がある…ってこと」
彼女は今、1人の女性として私と向き合っている気がした。
先を行く…人生の先輩として。
「愛情って不思議よね」
彼女は突然そう言い、先生と義理の娘の話に話題を戻した。
「あんな夫婦でもね、子どもが出来て…変わったのよ」
私は驚いた。
先生とお義姉さんの間に、子どもがいたのか。
「そのお子さんは、今…」
「残念だけど、この世に生まれてくることはなかったのよ」
先生とお義姉さんが事故で亡くなった時に、まだお腹の中だった…二人の間の子ども。
「妊娠が分かってから、神崎さんも変わったわ」
重い荷物は持つなとか…
階段は気をつけろとか…
妻にぴたりとくっついて…
過保護なくらいの夫になったのだと…
私は、黙って聞き続ける。
「名前はどうするとか…男の子だったら野球やらせるんだとか…」
私が知らない…
先生の姿を、私は想像する。
我が子を宿してくれた妻に、笑顔を向けている姿。