冷たい情愛Die Sekunde 最終話-10
「遠藤くんは…どうして…」
「あの子には、妊娠のことを伝える前に…事故が起きてしまったから」
「…知らないんですか?まだ…」
「義娘のことが大好きだったし、まだ高校生だったから…黙っておいたの」
私は、遠藤くんに今すぐ伝えたかった。
貴方はやっぱり、何も悪くなかったよと…
貴方が知らなかっただけで…
二人は…ほんの短い時間でも…
幸せだったのだよと…
貴方は、自分を責めることなどないと…
伝えたかった。
貴方の大切な恩人…お義姉さんは…
決して、不幸ではなかったよと…
一瞬でも恨んだ相手…その先生も…
決して、不幸ではなかったよと…
私だって、先生と離れてしまったことを…
後悔していないよと…
「ごめんなさいね、泣かせちゃって」
彼の母親は、…笑顔でそう言った。
「まだ他人の紘子さんと、こんな話をするなんてね」
「すみません、私が図々しく…」
「私、紘子さん好きよ」
「え?」
「ただ、もう少しずるくなってもいいと思うわよ」
彼女は、笑ってそう言った。