白い息-1
「…一馬…いる?」
いつものように梓が俺のアパートのチャイムを鳴らした
「梓?また喧嘩したのかよ」
「まぁね」
「だからってこんな時間にこられる気になってもみろ」
「えっ今何時?」
「えーと、夜の3時」
「うわぁ…ごめん」
「…まぁ寒いから入れよ」
「やたっ☆ありがとね」
黒いコートとブーツのいかにもデートな格好をした梓
梓は俺の妹で双子
双子には妹とか無いのかも知れないけど
高校になってから始めた一人暮らし
本当は梓から離れたくて始めた一人暮らしだった
でも梓は懲りずに俺の部屋にやってきた
「梓、それなに?」
「チューハイ☆」
「お前未成年だろ」
「しょうがないじゃん。これが飲みたかったんだから」
「だからってなぁ」
「もぅ良いんだ。あたし分かれる武志と」
まただ、彼氏と喧嘩した後はこれを言う
でも別れた試しがない
「お前なぁその台詞何回言う気なんだよ」
「…だって」
あ、梓の瞳がキラキラしてきた
もうすぐ泣き出すな
そう思った瞬間梓の目から涙がこぼれ落ちた
そして、梓は延々と俺に愚痴った
「…ん」
「梓寝るなよ」
「もぅすこしだけ…」
それだけ言うとまたスヤスヤと梓は眠りだした
散々俺に愚痴った後眠くなったらしい梓は眠りだした
俺の部屋で
暖房の切れた安いアパートは寒くて
息が白くなった
梓も白い息を吐いていた
「…梓」
名前を呼んでも気づきもしない
俺は今まで梓を見守ろうと思っていた
でも恋の相談を笑顔で答えるほど俺は優しくない
何度ももぅ来ないでくれと言いたかった
でも梓の瞳には優しく笑う俺が写って
言えない想いを心に秘めるだけ
「…好きだよ」
白い息を吐きながらそっと呟いた
言ってはいけない秘密の想いを