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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 《風神篇》後編-1

「リュナ、質問に答えていない。」

カルサの声は静かに響く。

「ロワーヌを知っていたか?」

カルサは真剣に、まっすぐリュナだけを見ていた。リュナは疑問符や不安が浮かぶ中、答えていく。

「…知らない。」

「太古の世界について何か…。」

「知らない!!」

リュナの叫び声がカルサの言葉を遮る。彼女は息があがっていた。

「カルサ、何が言いたいの?」

もどかしい気持ちが切なさに似ている。まっすぐに伝えてほしい。それはリュナの表情に全て表れていた。

 カルサはそれに応える。

「きみは古の民で、魔物だな?」

いつもより低く、ゆっくりとした口調はやけに心に入ってくる。

 リュナの中の時が止まった気がした。何の話なのか、頭の中で整理するのに時間がかかる。

「私が?」

そう口にした瞬間から鼓動が早くなっていった。あまりの出来事に目が泳ぐ。リュナは明らかに動揺していた。

「私が…古の民で、魔物…?」

カルサは黙って彼女を見ていた。リュナの反応を見ていた。

「だって…私は…。」

否定しようとしているのか、しかしリュナの言葉は歯切れが悪かった。

しばらく沈黙が続き、リュナはきつく目を閉じた。震える吐息は感情の高ぶりを表している。

「…自分が分からない。」

リュナは遠くを見ていた。視線の先なんてどこでもいい、頭の中でいくつもの記憶を甦らせる。

出てくるのはため息。思い返せば不可解な出来事が沢山ある。リュナはそれを知ってしまった。

「私は捨て子だったの。」

リュナの視線は落としたまま、カルサの方へは向けずに話し続けた。

「風神の力を持っている事に気付いた婆様が、レプリカと大切に育ててくれた。名前を付けてくれた、私に色々教えてくれた。」

名前、自分で出したその言葉に戸惑っていた。思い出すように名前、と呟く。

「私、今の自分がすべてだと思って…自分の事について何も知ろうとしなかった。」

それが今、こんな事になっているという不安がリュナの中で膨れ上がってくる。不安、不安、もしかしたら、そんな感情がリュナを満たしていった。


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